障害者の就職に関する問題は雇用促進法だけでは解決しない

   

法定雇用率は2018年4月に2.2%になりました。と同時に精神障害者もその対象に加わわりました。

結果として2018年度の障害者雇用率は過去最高の数字になったのです。
法定雇用率はさらに2020年には2.3%に引き上げられます。

このように障害者雇用枠が拡げられ雇用される障害者が増えていくのは本当にいい事だと思います。
しかし雇用がすすんでいる事と障害者が正当な評価を受けて雇用されているかはまた別の問題です。

今大企業が嫌っているのは雇用率が未達成のための指導で社名の公表措置が取られる事です。
(障害者雇用促進法第47条による)

社会的な信用にかかわる事なので大企業はなんとか雇用率達成を目指します。
その結果雇用される障害者の数は増えます。

しかし雇用率達成を満たすためだけに雇用された障害者に任される仕事はどんなものなのでしょう。
法定雇用率の上昇にともなう新たな問題について調べてみました。

法廷雇用率の上昇によって障害者の雇用枠が拡がったが・・・

 

法定雇用率が2018年4月に2.0%から2.2%へ引き上げられた。
また、対象となる民間企業の規模も従業員50人以上から45.5人以上に引き上げられた。
さらに雇用義務の対象として新たに精神障害者が加わった。

この事に関して私は以前
職を探す障害者にとって今は売り手市場、法定雇用率の引き上げはチャンス!
という記事を書きました。

法定雇用率の上昇により障害者を雇用しなくてはいけなくる企業が増え、雇用率を達成出来ないと納付金を支払わなければいけないという制度もあり障害者にとっては売り手市場だという趣旨の記事でした。

そして実際に障害者の雇用者数は過去最高を実現したのです・・・が。

障害者雇用率を十分に満たせている企業は全体の50%以下

現状では障害者雇用率を十分に満たせている企業は全体の50%以下なのです。

そして大企業よりは中小企業の方が障害者雇用率を満たしていない傾向にあります。

その理由は

●中小企業
障害者を雇用するより納付金を払った方がメリットがある。
●大企業
企業名が公表されるとイメージが悪いので障害者を雇用する。

納付金制度

 

障害者の雇用に関連して納付金制度がある。
法定雇用率を超えて障害者を雇用する企業には補助金を与え、未達成の企業からは納付金を徴収するというしくみ

この納付金の制度が今おかしな事になっています。

中小企業の場合は受け入れる障害者が1〜2人という事が多い。
その1~2人を受け入れるためのコストが納付金を払うより高くつく事多い。
そのため納付金を払うという選択肢になる。

大企業はグループ会社の分もカウントされるので受け入れる障害者の数が多くなる。
まとめて特例子会社を作ったりする事が出来、受け入れのコストが下げられる。

結果として経営的に楽ではない中小企業が納付金を払い、大企業に補助金が入るというおかしな事になっているのですよ。

納付金のジレンマ

納付金制度のシステムは法定雇用率未達成企業からの納付金が達成企業の補助金になる事で成り立っている。
という事は全部の企業が法定雇用率を達成したら納付金がゼロになり補助金が払えない事になる。

うがった見方をすると全部の企業が達成に近づいて納付金がゼロになりそうだったら法廷雇用率をさらにあげてやれば、この仕組みは続く。

障害者雇用水増し問題の背景として

中央省庁の多くの行政機関で、3,460人の障害者雇用が水増しされていた問題。
それも障害者雇用が義務化された40年前から続いていた。

2018年8月28日 厚生労働省は各省庁を再点検した結果、合計3460人分について国のガイドラインに反し、不正に障害者ではない職員を障害者として算入していたことを発表した。

行政機関の法廷雇用率は一般企業よりも高い。
その法廷雇用率を満たすためにこのような不正が行われていたのだ。

障害者雇用水増し問題の背景として障害者雇用政策の問題点が見えると思いました。

特例子会社

障害者の仕事のスキルを評価して積極的に会社の戦力に使っていこうとする会社もあるが、法定雇用率達成のためだけに特例子会社を作るという企業もある。

特例子会社

企業が子会社で障害者を雇用した場合には親会社の障害者雇用数に含めてもいい。
親会社内の各部署に障害者を受け入れるのではなく特例子会社にまとめて受け入れる。

グループ適用

特例子会社での雇用を企業グループ全体の障害者雇用としてカウントできる

 

大企業であるほどこの制度は扱いやすい。
グループ内の会社に共通する単純作業を特例子会社にまとめてしまえば、それに従事する障害者を受け入れる事が出来る。

外注していた清掃やクリーニングなどの業務を特例子会社にまかせている企業もあるのだ。

特例子会社での業務は企業の本業とは関係のない雑務である事が多い。
車内清掃、社員の制服クリーニング、メール便仕分け、内部書類のシュレッダーかけなど。

障害者雇用を肩代わりするビジネス

このような傾向がさらに顕著になったのが障害者雇用を肩代わりするビジネスの登場なんです。

障害者に任せる仕事がない企業はどうやって障害者を受け入れるのか。
そこの目をつけたビジネスがすでに登場しています。

障害者に仕事をする場を提供するというビジネス。
実際あるのが農園で野菜を作る作業を提供する会社。

障害者に任せる仕事がない企業は雇用した障害者にそこで働いてもらう。
納付金を納めるのと同等の金額で作業を提供してもらえれば企業としては法廷雇用率を達成している企業として認めてもらえるので十分利益になっている。

まとめ

障害者雇用促進法は、本来障害者の能力を仕事に生かすことが目的であるべきです。
企業の戦力と働けるようにです。

しかし現状では法定雇用率を満たすためだけにわざわざ雑務を生み出してそれに従事させるような事も起きている。

ただ単に障害者を雇用させるようなやり方ではこれからは済まない。
強制的に法律で雇用率をあげていくだけでは解決しない問題なんです。

今回の記事は仕事の現場で障害者を受け入れる立場の人にも読んでほしいと思いました。

 


以上「障害者の就職に関する問題は雇用促進法だけでは解決しない」という記事でした。
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