障害者雇用の現実、精神障害者の就労は難しいというのは本当か?

   

2018年4月に精神障がい者の雇用が義務化されたことと法廷雇用率が引き上げになったことで精神障がい者の雇用者数は6万7395人で前年度から34.7%あがっています。

しかし全国の精神障がい者数392万4千人からするとその雇用者数は僅か1.7%です。

(→資料:内閣府による平成30年版障がい白書)

まだまだ精神障がい者の雇用は少ないのが現実です。

そして精神障がい者に対する職場での理解もあまり広まっているとは言えません。

今回の記事では

●障がい者雇用に対する企業の姿勢
●雇用されるのが難しいと感じている精神障がい者の職場での悩み
●障がい者雇用の厳しい状況の中での改善・解決策

これらについて考えていきたいと思います。

法廷雇用率の引き上げなどはどの程度の人が認識しているのか

エン・ジャパンが2017年に行った企業へのアンケート調査によると次のような数字になっています。

Q:2018年4月から、民間企業の障がい者の法定雇用率が「2.0%」から「2.2%」に引き上げられることをご存知ですか?

知っている 60%
知らない 40%

ここまでは過半数の企業が法定雇用率の引きあげを認知しています。
しかしもっと先の事になると、

Q:今後2021年4月までに、障がい者の法定雇用率が「2.2%」から「2.3%」に引き上げられ、対象となる企業が従業員「43.5人以上」に変わることをご存知ですか?

知っている 28%
知らない 72%

この先もっと多くの障がい者を雇用する義務が出てくることはまだそれほど認知されていません。

Q:貴社では現在、障がい者を雇用されていますか?

従業員50人以上の企業
はい 69%
いいえ 31%
全体
はい 48%
いいえ 52%

この結果から50人未満の中小企業で障がい者を雇用しているところはまだまだ少ないのがみてとれます。

アンケートに付随したコメントでは「大手企業と違い、中小企業では採用すら難しい」という意見が少なくないようで、会社の規模による違いは大きいようです。

このアンケートで特に気になったのが次の点です。

Q:障がい者を雇用したきっかけは何ですか?

法廷雇用率を達成するため 65%

法廷雇用率改正の効果は現れていますが障がい者を理解して雇用している会社は少ないという事です。

Q:障がい者を雇用していない理由は何ですか?(障がい者を雇用していない企業に対する質問)

社内の支援や理解が得られないから 17%

Q:貴社での、障がい者雇用の悩みや懸念点をお教えください。

周囲の社員の「障がいへの理解」 37%

経営者や人事担当者が障がい者の雇用をしようとしても職場内での理解を得るのが難しいのが現実のようです。

 

ここまでのまとめ
障がい者を雇用する事は企業にとって売り上げアップに繋がる事柄ではありません。
法廷雇用率を上げていって強制的に障がい者の雇用を促すしかないのが現実なのです。
(現在は従業員45.5人以上の企業は法廷雇用率を達成出来ないと納付金を支払わなければいけない)

 

精神障がい者雇用の現実

2021年4月までに、障がい者の法定雇用率は「2.2%」から「2.3%」に引き上げられます。
それに伴い障がい者雇用者数は確実に上がっていくのでしょう。

心配なのは障がい者に理解のない職場でも障がい者を受け入れる必要が出てくることです。

特に見た目では健常者と変わらない精神の障がいを持つ人はなかなか理解されてきませんでした。
「なんで出来ないんだ」というようなイメージを持たれてしまいやすいのです。

職場で実際に障がい者に接する機会のある人と実際にはそういう機会のない人との障がい者に対するイメージは大きく違います。

賛否両論ありますが日テレの番組「24時間愛は地球を救う」のような障がい者を美化する捉え方は障がい者雇用の現実にはそぐわないものだと感じています。

 

仕事をさせてもらえない職場

ここまでの記事で法廷雇用率を満たすためだけに障がい者を雇う企業は少なくないという数字を紹介しました。

そうなると障がいに理解のない職場に配属されてしまう事も出てきますよね。

そういうところに入ってしまった障がい者からは

障がい者枠で入ったがまともな仕事をまかされず暇だった。
会社のお荷物のように感じていて苦痛だった。

という声を聞きます。

会社からすれば無理な仕事はさせたくない、障がいに配慮しているつもりだ、という言い分になるようです。

こういう状態を「仕事をしなくても給料がもらえるからいい」という風に捉えますか?

ずっとその会社が存続するとは限りませんよね。
まともな仕事をまかされないイコールなんのスキルも身につかない状態が続いてしまいます。

転職せざるを得ない状況になったときに非常に不利な事になってしまいます。

解決策

出来る事をアピール

法廷雇用率を満たすためだけに障がい者を採用している企業は実際にその人にどういう能力があるのかを認識していない事が多いのです。

また障がいについても、どういう事に配慮をすればいいのか理解していない事も多いと思います。

そのため障がい者は自分にどういうビジネススキルがあるのかをアピールする必要があり、自分の障がいについてはどのような点で配慮して欲しいのかを十分に説明する必要があるのです。

特に精神・発達の障がいのある方は見た目ではわからないので職場で誤解されないように説明出来ないと自分が困ることになりますよね。

 

転職を検討する

どうしても理解の得られない職場であれば転職を検討しなければいけないですよね。

前の項目でも書きましたが「仕事をしなくても給料がもらえるからいい」と考えるようではまるっきりリスク管理が出来ていないと思います。

将来のことを考えたら、ビジネススキルを身につける、そのスキルを活かせる職場に就く。
これは本当に大事なことだと思います。

残念ながら会社が傾いたときに最初に切られるのは障がい者雇用枠だとも言われています。

転職活動をサポートしてくれる→転職エージェントなどを利用するのも手だと思います。

まとめ

法廷雇用率が上がっていって障がい者の雇用絶対数が上がっていくのは大賛成です。

でも職場での理解が広まっていかないと、現実はまだまだ厳しいと感じています。

職場で1年以上も同僚と目を合わせていないという精神障がいの方もいます。

特別な目で見てしまう、特別な目で見られていると意識してしまう。
この両者の距離を縮めていくにはどうしたらいいんでしょうね。


以上「障がい者雇用の現実、精神障がい者の就労は難しいというのは本当か?」という記事でした。
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